従って聖書がわかるというのは、度々言うように、数学の問題がとけるのと違って一つわかればすべてがわかるのである。それはちょうど親心がわかって、今まで不可解であった親の態度がすっかりわかると同じである。このことかのことが解るのでなく、すべてがわかるのである。そしてこれは聖書が神の霊感によるものであることを思えばむしろ当然である。すなわち、読者がある一節または一句を通して同じ神の霊に触れる時、全体の精神が氷解するのである。
言うまでもなく、右のようにして聖書の根本真理がわかっても、古典としての難しい所が解るのではない。それらは学問の力によるほかはない。しかし学問的にわかっても、前に言うように信仰がわかるわけではないから、本当の聖書の読み方はあくまでも一人で静かに祈りながら読むことである。聖書は人が書いたものではあるが、神の霊によって書いたものであるから、それがわかるためにはこれを書いた人と同じ霊の世界に入らねばならぬ。そしてそれには祈りが必要である。
(『著作集』第4巻.1~3頁)
1885年8月2日 | 福岡県朝倉郡久喜宮村(現在の杷木町)に生まれる |
1904年 | 福岡の修猷館中学卒業。第一高等学校入学 |
1905年 | 一高2年生、内村鑑三著『基督教問答』に深い感銘を受ける |
1909年 | 東大法科3年生、内村鑑三の柏木聖書研究会に入門 |
1911年 | 東京帝国大学卒業。農商務省に就職(数年して参事官に昇進) |
1921年 | 斎藤園子と結婚 |
1923年9月1日 | ドイツ留学の準備がととのった矢先、関東大震災で夫人即死 留学をとりやめ、以後伝道活動を開始 |
1929年12月 | 内村集会から独立、「東京聖書知識普及会」を主宰 |
1930年1月 | 『聖書知識』(月刊誌)発行(1963年6月第397号まで) |
1951年 | 『福音書異同一覧』出版 |
1953年 | 『マルコ福音書』(「口語訳新約聖書」第1分冊)出版 |
1973年9月9日 | 逝去(88才) |
いま入手可能な岩波文庫は、下記の二冊のみ。
「使徒のはたらき」は品切れのままのようです。
塚本虎二[訳]新約聖書 福音書【ワイド版 岩波文庫】 本体 1,400円 1991年12月5日発行
塚本虎二[訳]新約聖書 福音書 本体 760円 1963年9月16日発行
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