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山我哲雄『聖書時代史 旧約篇』

同じシリーズの佐藤研氏による新約篇の紹介文を書くために新約篇を再読して、あらためて教えられるところがあった。それで旧約篇も読み返してみる気になった。

わたしは旧約よりも新約の方が馴染んでいるので、新約篇はすらすら読めたが、旧約篇はそうはいかなかった。忘れていることがたくさんあって、読む速度を上がらなかったのだ。

旧約篇の最初の要所は、イスラエルの起源だ。つまり、イスラエルと呼ばれる部族連合の成り立ちと、ヤハウェ信仰を導入した経緯という問題である。ここですでに旧約に馴染みがないわたしは困難に直面した。現代の歴史学が事実とすることと、旧約聖書が事実だと信じて伝えている歴史との隔たりが大きすぎて、わたし自身の中でこの二つをうまく橋渡しして収めるという作業をなりなおさなければならない。それで読む速度を上げられないのだ。そういう隔たりは新約篇でもあったのだが、自分の頭の中で歴史的事実と信じられた歴史との間の橋渡しできていて、うまく両立して収まっている。今回、旧約篇を読んだことで、旧約についても自分の頭に両立して収められるようにしたいものだ。

イスラエルの起源とヤハウェ信仰の導入の経緯について読んでいて、そもそもヤハウェ信仰の起源をもっと詳しく知りたいと思った。山我氏は「一神教の起源」という別の著書でこれを中心テーマに論じているので、次にはそれを読もうと思う。

イスラエルの起源に続く第二の要所は、王制の導入と南北両王国の並立の時代だ。王国の成立は、イスラエルがヤハウェ信仰で結ばれた部族連合から、カナン系の先住民を含む領土国家になったということで、政治的理由が他宗教との関わりの扱いにからんくるようになる。南北の歴代の王の名とその時代を覚えるのは難しい。

時代史の第三の要所は、北王国の滅亡そしてユダ王国の滅亡とバビロン捕囚までの時代。南の預言者たちの活躍した時代でもある。

その次の第四の要所は、ペルシアの支配の時代における捕囚からの帰還と神殿の再建。エズラとネヘミアの活動した時期だ。

第五の要所はヘレニズム時代におけるヘレニズム文化の流入とマカベアの乱からハズモン王朝の樹立へ。アラム語が日常語になった時代だ。

第六の要所は、ローマの介入が始まり、ヘロデがユダヤ王として支配を確立。この時代はイエスさまの時代に直接につながる。

以上の六つの区切りは、山我氏の章立てよりも粗雑だが、こう整理した方が自分なりに把握しやすい。時代史を学ぶことで、旧約を読むとき知っておきたい歴史的背景が与えられる。細かいことは覚えていられないので、必要に応じて読み返せばよいと思う。なにしろ旧約時代史は新約時代史の200年にくらべて1500年とはるかに長く、旧約を専攻しなかったわたしには馴染みの薄い分野であることを再確認させられた。あらためて、旧約聖書を読んでみようと思った。


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