この文庫本を外に出たときにちょっと空いた時間に読もうと持ち歩いていましたが、20日足らずで読み終わりました。
ハプスブルク帝国とは私にとっては聞き慣れない言葉でしたが、1273年にハプスブルク家が神聖ローマ帝国の帝位を得たときから、ナポレオンのウィーン入城により、1806年に帝国が解体したのち、1918年に第一次世界大戦の間に今度はオーストリアも帝位を廃するまでの650年間のハプスブルク家の支配をいいます。
宗教改革の前後の時代の神聖ローマ帝国ってどんなものだったのかとか、この帝国はどんな風に消滅したのかとか、EUと歴史的なつながりは何だろうかとか、疑問でした。ともかく中欧の歴史に馴染みがなかったので、概略でも分かればと思って、二年前位にこの本を買ったのですが、積読になっていました。小さな本だし、著者はジャーナリスト出身のためか、テンポの良い文章で読み易く、すらすら読めました。なにしろ長い時代を薄い文庫本に納めるのですから、仕方ありません。物語調の語りは立ち止まって考えてみる箇所もなく、頭の中を素通りしてしまった感があります。切れ切れの時間に読み継いだせいもあるのでしょうが、何が書かれていたか、ほとんど頭に残っていません。それでも、中世から現代にいたるまでの中欧、東欧の歴史をハプスブルク家の支配という視点から統一的に見るというのは、初めてのことで、ひとつ新しい見方を得たという気がします。
印象に残るのは、他民族・多言語の帝国を民族自決を旗印にして解体してはみたものの問題噴出で、EUという形でふたたび統合を目指す運動に努力したのが、帝国貴族のクーデンホフ伯であったり、ハプスブルク家の当主であったりしたということで、ハプスブルクの統合の精神はいまに生きているということです。
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