マルコ福音書の成立年代について、イエスさまの終末予言の記述を70年のエルサレム崩落の事後予言と見るか否かが論じられます。そのエルサレム崩落を導いた対ローマのユダヤ戦争の資料は、ヨセフスの書いた『ユダヤ戦記』全7巻が唯一だと言われます。
ヨセフスは紀元37年ころエルサレムで生まれ、100年ころローマで死んだ、サドカイ派の祭司です。ユダヤ戦争ではガリラヤ地方の指揮官に選ばれましたが、ローマ軍と戦って捕虜となり、寝返ってローマ側について従軍しました。そして、ローマで『ユダヤ戦記』を書きました。マカベア時代からエルサレムの炎上とマサダの最後までを描いています。その後、天地創造から彼の時代までのユダヤ人の歴史物語『ユダヤ古代誌』全20巻を書いています。
ヨセフスの著作は、キリスト教世界でとても大事に読み継がれてきたと聞くので、ヨセフスとは一体どのような人なのだろうという関心から、この本を読みました。この本はヨセフスの身の処し方の謎、この人の著作のたどった数奇な運命を描いています。
この本の著者の秦さんによれば、ヨセフスは歴史家であるよりもストーリー・テラーと見た方が実相に近いようです。だとすれば、ヨセフスの著作は、堅苦しく考えず、彼の語る物語を気楽に楽しめば良いわけです。秦さんのこの本のおかげでヨセフスのあの有名な二冊の著作をより身近に感じることができました。
ところで、ヨセフスの著作の受容史を読んで気づかされたのですが、私はユダヤ戦争後のユダヤ人の歴史について何も知らずに済ませてきたことです。ヨセフスの語る物語を楽しむ前に、次はユダヤ人の歴史について読もうと思います。
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