ある方から、歌の中に「ホサナ」という言葉が出てきますが、どういう意味ですかと質問をうけました。その場では短くお答えはしましたが、ここにややていねいに書いておきます。
ホサナ(Hosanna)は、詩編118からとられた言葉で、ヘブライ語ではホーシーアー・ンナー(ああ、救ってください)を意味します。ですから元来は祈りの言葉なのですが、やがて儀式の中で歓呼の声として、日本語で言えば「バンザイ」という風に使われるようになりました。イエスさまがエルサレムに入られた時、人々は喜びの余りこの言葉を繰り返し叫びました(マルコ福音書11:10,11など)。
わたしたちの礼拝式文では聖餐式の部の歌として出てきます。歌詞はこうです。
聖なる、聖なる、聖なる 万軍の主。
主の栄光 天地に満つ。 天にはホサナ。
主のみ名によって来られる方をたたえよ。 天にはホサナ。
初めの二行がサンクトゥス(Sanctus、聖なる)で始まるイザヤ書6章の言葉。それにベネディクトゥス(Benedictus、たたえよ)で始まる詩編110編26が結びつき、それぞれに「天にはホサナ」という歓呼の声が付け加えられて、サンクトゥスの歌詞はできています。その原型がマルコ福音書11:9,10 の群衆の歓呼です。「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。我らの父ダビデの来るべき国に、祝福があるように。いと高きところにホサナ」。
ですから、わたしたちが簡単にサンクトゥスと呼んでいるものは、サンクトゥスとベネディクトゥスとが一つになったものなのです。ミサ曲では、この二つは別の曲として歌われます。
バッハのミサ曲ロ短調のサンクトゥスはここで聴けます。(リンク切れ)
ベネディクトゥスはここ。(リンク切れ)
ところで、この歌詞にヘンデル作曲のオラトリオ「ユダ・マカベウス」の曲をつけたのが讃美歌130番「よろこべや、たたえよや」です。以下で聴けます。(リンク切れ)
1.よろこべや、たたえよや シオンの娘、主の民よ、
今しきますあまつきみ、今しきます平和の主、
よろこべや、たたえよや、シオンの娘、主の民よ。
2.さちあれや、主の民に、ホサナ、ホサナ、ダビデの子
今ぞきたる神の国、今ぞなれる主のちかい
さちあれや、主の民に、ホサナ、ホサナ、ダビデの子。
3.むかえよや、さかえの主 ホサナ、ホサナ、ダビデの子。
平和の御座、ゆるぎなく、めぐみの御代かぎりなし。
むかえよや、さかえの主、ホサナ、ホサナ、ダビデの子。
ただし、ルーテル教会の讃美歌集ではこの曲に別の歌詞を付けています。
次は「ホサナ」から離れて、この讃美歌の曲についてのお話です。
ヘンデルがこの曲を作ったときの歌詞(英語)はこうです。
この出だしの「見よ、いま勇者は帰る」というのが、この歌の日本語の曲名となりました。この曲は、得賞歌として表彰式の定番なので、誰もが耳にしたことがあるでしょう。この慣行は日本だけではないそうです。
前述したようにこれはオラトリオの一節なのですが、オラトリオとは、聖書等の宗教的内容の歌詞を独唱や合唱に管弦楽つきで演奏する曲の形態で、オペラとは違って演技はつきません。ユダ・マカベウスは、旧約聖書続編「マカバイ記一」に書かれています。紀元前2世紀頃に現在のイスラエルの地を制圧していたシリアと戦い、独立を勝ち取った英雄です。
ところがこの曲、いつのころからかオリンピックとかスポーツの国際大会では決して演奏されなくなりました。その訳は、ユダヤ人の英雄をたたえ、キリスト教の讃美歌になっている曲が勝者への祝福に使われることに、イスラム諸国から異議があったためといわれます。オリンピックで金メダルを取った国の国歌が演奏されるのは、こうした問題から生じた妥協の産物のようですよ。
この項は、Maas & Schelde さんの以下の記事を参考にさせていただきました。(リンク切れ)
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