ルーテル教会では、読むべき聖書個所が、教会暦に従って、神の救いの歴史と信徒教育を配慮して選ばれています。したがって、一年を通して聖書全体の内容を読むのですが、創世記から黙示録までの順序には従っていません。その特徴をもう少し説明しますと、以下の三点があげられるでしょう。
聖書解釈の原則「神のことばは神のことばで解釈する」によって、並行朗読をします。旧約聖書・新約聖書の使徒書・福音書からそれぞれ読みます。朗読量はこの三個所一組で主日毎にほぼ等しくなるように考えられています。
聖書は毎年同じ個所を読むのではなくて、三年かけてほぼ聖書全巻を読めるように配分されています。三年周期とすることにより、主題性と連続性をかねることができました。聖書の順番にしたがってマタイ福音書を読む年をA年、マルコを読むB年、ルカを読むC年と名づけています。ヨハネ福音書はABC、特にBに配分されています。
教会暦の始まる年の西暦の四桁の数の合計が三で割り切れる年がA年マタイ年です。余り1がB年マルコ年、余り2がC年ルカ年となります。今年は2002年から始まっているので4。4÷3=1余りが1。B年またはマルコ年です。
詩編は聖書であるけれども、祈りと讃美のために用いられます。聖書日課の三箇所一組には入らず、毎週読まれます(または歌われます)。ルーテル教会では、讃美歌がこれに代わっていましたが、近年になって詩編が礼拝の中で回復されました。
主日礼拝における聖書朗読個所の配分表は、各教団組織では礼拝委員会というような委員会が委託を受けて研究と試作をし、試用してみたり、全教会の意見を聞いたりして最終案を作り、公の機関で決定します。ローマ・カトリック教会なら、ローマ教皇が使徒憲章として公布します。微調整のばあいを除き、改定をするときは、配分表だけが変わるということはなく、教会暦・礼拝式文・聖書個所は一つのセットとして、同時に改定されます。
礼拝の中心要素として、聖書を朗読することはユダヤ教の会堂シナゴーグ以来のやり方です。一回の礼拝で全聖書は読めませんから、暦に合わせてそれにふさわしい朗読個所を選ぶことになります。シナゴーグの礼拝ですでに律法(モーセの書)からと預言者(他の部分)からの二個所づつ読まれ、それが三年サイクルに配分されていたといわれています。
初代キリスト教会はこの伝統を受け継いで、旧約聖書と使徒書と福音書の三個所を読むようになりました。配分表にしたがって聖書を朗読するのは、ですから、非常に古くからの礼拝のやり方です。
配分方法の基準は、まずキリストの生涯を一年でどう祝うか、教会暦を定めます。また毎週の主日にどういう礼拝をするのか、どういう讃美をするのか、どういう祈りをするのか、礼拝式文が作られます。礼拝には長い伝統がありますから、礼拝の歴史や礼拝の神学の専門家が礼拝委員に選ばれます。
聖書の朗読個所は、暦を三回繰り返すうちに、聖書の主要な出来事、主要な内容をもれなく読むように個所を選びます。これが三年サイクルのA表・B表・C表です。また、主日によって極端に朗読個所の長短ができないように、長さを平均化します。この仕事は、聖書学の専門家が参加します。実は、主日礼拝では配分しきれず、一度も読まれない小預言者がいます。さて、誰でしょう。
書き忘れました。神礼拝は、古今東西のキリスト者が共通に行う普遍的なわざです。ですから、聖書朗読配分(聖書日課)も、一つの教団組織が単独で定めるというよりも、教団組織を越えて、なるべく共通に使われるものを作ろうと努力しています。教派を越えて、協力しあっています。というわけで、いまでは、ローマ・カトリック教会と主要なプロテスタントの教団ではほとんど同じ日曜日には同じ聖書個所が読まれるようになってきています。この傾向がもっとも進んでいるのはアメリカ合衆国。日本はまだこれからです。
(追記: 2004-01-12)
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