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教会暦について

キリスト教会の生活は、一般の暦とは違う「教会暦 church calendar」に従って営まれます。この教会暦は、毎年、クリスマス(12月25日)の4週間前の日曜日――11月30日(聖アンデレの日)に最も近い日曜日――から始まります。

そして一般の暦が春夏秋冬に分けられるように、教会歴もいくつかの季節seasonに分けられ、その季節を表わす色liturgical color(典礼色)が定められています。白地に金色の日はキリスト教の大きな祝いを表わしますが、ふつうは白の季節と呼ばれています。また青は新しい習慣で、むかしは紫でした。

待降節 Advent 第1主日
教会歴の始まり。この日からクリスマスに備えるシーズンが始まります。
降誕祭前夜 Christmas Eve 12月24日
イエス・キリストの誕生をいちはやく祝って、燭火礼拝を行います。イエスさまの時代には、日没から日没までを一日と数えていました。その数え方によれば、24日の日没後はクリスマス当日になります。
降誕祭 Christmas 12月25日
イエス・キリストの誕生を記念する祝日。この日から12日間がクリスマスの季節です。
主の命名日 Name of Jesus 1月1日
元旦はクリスマスからちょうど一週間後にあたりますが、教会ではこの日、幼子が割礼を受け、イエスと名づけられたことを祝います。
主の顕現日 Epiphany 1月6日
東方の博士たちがキリストを拝みに来たこと、キリストが世界に顕されたことを記念します。
主の洗礼日 Baptism
顕現を祝った次の日曜は、キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受けたことを記念します。
顕現節第3主日~
次の変容の主日までは、緑色の期間となります。非祝祭の季節、教会の成長を目指す期間です。
変容の主日 Transfiguration
次の灰の水曜日の週の始めの日曜日。キリストが山上で変容したことを記念します。
灰の水曜日 Ash Wednesday
キリストの復活を祝う準備のシーズン(四旬節 lent)の始まり。
四旬節第1主日
四旬とは四十間という期間を表わす言葉。むかしは受難節といっていました。
枝の主日 Palm Sunday
受難主日 Passion Sunday
キリストが受難する週の初めにエルサレムに入ると、群衆は棕梠(しゅろ)の枝を打ちならして歓迎したことを記念します。近年生活が忙しくなったため、週日に行う礼拝を先取りして、受苦(十字架の死)を記念するようにもなり、受難主日の名ができました。この週を受難週とか聖週 holly weekといいます。受難週と四旬節を区別して典礼色は深紅です。昔は四旬節と同じく紫でした。
聖週木曜日・洗足木曜日 Maundy Thursday
キリストが12弟子の足を洗い、愛の戒めを教え、最後の晩餐を共に持った日。
聖週金曜日・受苦日 Good Friday
キリストが十字架につけられて死なれた日。全人類の贖罪がなしとげられ、救いの基礎が置かれました。
復活祭 Easter/Pascha
キリストが墓の中からよみがえられた日。キリスト教の最大の祝祭日。日取りは毎年変化します。
主の昇天日 Ascention
復活後40日目。キリストが天に帰られた日。
聖霊降臨祭 Pentecost
キリスト復活の50日後に弟子たちの上に天から聖霊がくだり、教会が誕生したことを祝います。ペンテコステは50を意味します。キリスト教では降誕祭、復活祭、聖霊降臨祭が三大祝日です。
三位一体主日 Trinity
ペンテコステの次の日曜日。神が父と子と聖霊なる神であることを記念します。
聖霊降臨後第2主日~
三位一体の次の日曜日から教会暦の終わりまで緑の季節(教会の季節)が約半年間続きます。
宗教改革記念主日 Reformation 10月31日
マルチン・ルターは1517年のこの日、教会の扉に「95か条の提題」を貼り出しました。これが端緒となって教会改革の運動は急速に広まり、ルーテル教会が誕生しました。マルチン・ルターとルーテル教会とが結びつかない人は案外多いようですね。
全聖徒の日 All Saints' Day 11月1日
死者を記念する日。夏のお盆と春秋のお彼岸を合わせたような日。ルターはこの日に教会に集う人に読ませるために前日に「提題」を貼ったとされています。
王キリストの主日 Christ the King
教会の暦の最後の日曜日。最近、日本の教会ではこの日が守られなくなりました。次の日曜日は新しい暦の始まりで、待降節第1主日となります。

教会暦の分類

教会の暦は、大きく三つに区分されます。まず、クリスマス周期とイースター周期がきて、それに教会の時(緑の季節、聖霊降臨後の季節)が続きます。

祝日には四段階があります。祝日が重なる場合には、上の段階の祝いが優先して守られ、下位のものが翌日に回されたりします。

(1) 大祝日
復活祭、昇天日、聖霊降臨祭、三位一体主日、降誕祭、顕現日。これらの祝日は、かならず守られます。
(2) 主日と斉日
すべての日曜日は、主イエス・キリストの復活を記念する祝日です。教会では、日曜日を「主(しゅ)が復活された日」という意味で、「主日」(しゅじつ)と呼んでいます。
斉日(さいじつ)は聖灰水曜日と聖週です。斉日もかならず守られます。
(3) 小祝日
命名日、奉献日、受胎告知日、訪問日、使徒と福音記者の日、宗教改革日、全聖徒の日など。これらを週日に守れない場合は、緑の主日と降誕後主日に守ることもできます。逆に、優先できない主日や祝斉日とかさなった場合は、翌日にずらしたりして守ります。
(4) 記念と行事
記念は、聖人や殉教者を覚える日ですが、(1)(2)(3)に優先できません。宗教改革はこれらをほとんど整理してしまいましたが、わたしたちがルター、全聖徒、昇天会員だけを記念するのは、聖徒の交わりを狭くしすぎるので、再検討を要します。
行事は、元日や教会の記念日などが含まれます。

教会暦の色

教会の暦は、祭壇を飾る色、牧師の掛けるストールの色によっても、その日の特徴を表わします。一般には以下の四色が用いられますが、最近はやや贅沢に、待降節に青、聖週に深紅を用いる教会もあります。

白(神の色)  降誕節、顕現日、復活節、三位一体主日、全聖徒の日など。

赤(聖霊の色) 聖霊降臨日、宗教改革日、使徒と福音記者、殉教者、按手式、教会記念日など。

緑(自然の色) 聖霊降臨後(23~28主日)、顕現後(4~9主日)。

紫(悔改の色) 待降節(4主日)、四旬節(7主日)、聖週(1主日)。

教会暦の歴史

教会の暦は、ある特定の時をもって完成したのではなく、じょじょにイースターとクリスマスを中心とした二つの周期が整ってできてきたのです。ルーテル教会の用いる暦は、聖人や殉教者を覚える日を大幅に削っていますが、西方教会つまりローマ・カトリック教会や聖公会と同じ伝統に立っていて、ほとんど同じです。

復活日から聖霊降臨日までの50日間が、最初の三世紀の間、祭りとして守られました。この間に、主の受難、復活、昇天、聖霊の降臨があったからです。これはユダヤ教のパスカ(過越祭)とペンテコステ(五旬祭)の発展的解消です。

毎日曜日は主イエス・キリストの復活の記念日です。はじめは安息日を守った翌日に、キリスト信徒の追加として日曜日にも礼拝を守っていましたが、のちには日曜日だけが祝われるようになりました。復活を中心とする考えは、殉教の日を真の誕生日として記念することにも表れます。

西暦313年にキリスト教が公認されると、エルサレム教会の様式が流入し、棕櫚主日・復活祭・昇天日・聖霊降臨祭を分けて守るようになりました。

復活祭はニケア公会議(325年)以降、「春分の日(3月21日)の後にくる最初の満月の次の日曜日」に守られているので、3月22日から4月25日の間に来ます。

洗礼志願者はイースター・イブに受洗していました。次の機会はペンテコステ・イブでした。洗礼の準備として四旬節が新しく発生し、ニケア公会議までには40日間と決まってきました。

六世紀に、西方教会では四旬節の三つの主日を、戦争、災害、飢餓よりの助けを祈る日として守っるようになりました。この習慣は、ルーテル教会でもつい近年まで続いていました。

それらの主日は四旬節の準備と考えらていました。この頃までには、四旬節は洗礼の準備期間ではなく、復活祭の準備としての悔い改めが強調されるようになりました。この季節をかつて日本語で「受難節」と呼んだのは、この悔い改めの強調のせいです。

降誕祭と顕現日は、異教の祭りを発展・解消したものです。

三世紀初めに、エジプトではオシリスの顕現日である1月6日に主の顕現を祝いました。これがまず東方教会に広まり、四世紀中頃にはすでに西方教会全体に守られるようになっていました。顕現は誕生に限られませんが、西方では博士の訪問日として祝われました。

西方教会では西暦354年に、太陽神ミトラの冬至祭である12月25日を主の降誕日と決めました。東西の教会は、四、五世紀にこの両方を採用しあい、降誕祭は12月25日からり1月5日まで、1月6日が顕現日となりました。

降誕祭ははじめ復活祭前のように懺悔の期間を40日間もっていましたが、六世紀に待降節は四つの主日の期間に短縮されました。

聖霊降臨日から待降節までの約半年間は、聖霊降臨後と呼ばれていましたが、十世紀に第一主日が三位一体主日として祝われるようになると、イギリスでは、三位一体後と呼ばれるようになりました。最終主日は「王なるキリストの日」と呼ばれます。

(追記: 2003-08-26)

  • 2003-08-19

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